『人事訴訟が変わりました』  弁護士 可児康則
   
 
Q.離婚、認知などの裁判(人事訴訟といいます。)を起こす場合の手続が変わったと聞いたのですが、どういったところがかわったのでしょうか?

A.これまで、家庭裁判所での調停が不調になったような場合、裁判は地方裁判所へ起こさなければなりませんでした。しかし、新しくできた人事訴訟法により、人事訴訟についての管轄が地方裁判所から家庭裁判所に変わりましたので、これからは裁判も調停と同じ家庭裁判所へ起こすことになります。

Q.裁判の手続も変わるのですか?

A.手続自体は、基本的にこれまでと変わりません。

Q.では、具体的にどういったところが変わるのですか?

A.たとえば離婚の事件の場合、子どもの親権や監護などを巡って争いになることが多いのですが、地方裁判所には、子どもの生活状況などを調査することができる職員が配置されていませんでした。そのため、ときには、訴訟事件を一旦家庭裁判所の調停に付して、家裁の調査官に生活状況等の調査を行わせることもありましたが、手続が遅れる原因ともなっていました。しかし、今後、調査官の配置されている家庭裁判所で裁判をするようになりましたので、裁判の手続の中で、必要に応じ、調査官の調査を活用することができるようになりました。

Q.調査官とはどういった人たちなのですか?

A.心理学などを専門に学んだ裁判所の職員で、子どもとの面接、家庭訪問、学校訪問などの方法で、生活状況等の調査を行ったりします。また、少年事件などで、少年の調査などを行い、処遇に関する意見を書いたりもします。

Q.その他に、何か変わったことはありますか?

A.参与員と呼ばれる方々が裁判に関与できるようになりました。参与員は、裁判所の職員ではなく、一般の市民から選ばれた人たちです。そのような市民から選ばれた人たちが、尋問に同席して裁判官とともに話を聴いたり、和解の席に立ち会い、裁判官に意見を述べることができるようになりました。また、これまで和解で離婚する場合には、離婚については協議離婚をするかたちをとっていたのですが、今回の法律により、新たに和解離婚が認められることになりました。

 新しい法律が施行されてからまだ数か月です。そのため、今後、どのような変化が生ずるかは予測できないところもありますが、少しでも、利用者にとって使い易い運用がなされるよう、裁判所に声を届けて行きたいと思います。

 

<戻る>