「退職年金打ち切り事件」 弁護士 前田 義博
尾張地方の名門紡績会社が会社を分社化。
その子会社に移籍した労働者が退職し、退職年金をもらうことになった。
ところがグループ企業が共同して運営していた退職年金基金が破綻してしまった。
子会社はすでに解散している。年金の支給を打ち切られた労働者はどうすればいいのか。
この紡績会社は、親会社を「連邦政府」、子会社を「共和国」と呼んで、
一体管理していた。
年金基金だって、全社分をひとつのどんぶりに入れて使ってきた。
これで親会社が知らん顔はおかしいじゃないか。
(ついでにいうと親会社の労働組合=連合系も知らん顔。
支援しているのは全労連・全国一般です)
親会社は責任を取れという当然の言い分を裁判所がどう判断するか。
裁判ははじまったばかりです。
退職年金の打ち切り事件はほかにもありますが、子会社の解散がからんだ事件は
見当たりません。
でも、こういう事件はほかにも起こるのではないか。
この事件では銀行を被告にしてはいないけれど、影には銀行がいるように思います。
不良債権処理の「痛み」の転嫁先は労働者なのです。
そういう意味でも、同様の事件は多発するのではないか。
確定拠出年金制度(401k)が実施に移されつつあります。
年金の打ち切りや切り下げを合法化するようなものなので、これにもよほど注意を
しなければならないと思います。