「言葉」−手話講座に参加して− 事務局 岩本 学
事務所創設30周年記念事業の一環として、2001年5月より手話奉仕員育成講座
に参加している。
1年目は入門・基礎コース、2年目は応用コースである。
日本手話の技術習得と聴覚障害者の生活・文化等を学ばせてもらっている。
特段の事情がない限り、週1回の講習には終業時間と共に事務所を出て、教室のある
豊田市に向かう。
私はもちろん、参加者の全てが未経験者。
講義には通訳もなく、講師は全員聴覚障害者。
講義中は手話以外の会話は一切禁止。
「今、何を教えてもらっているのか」自分の感性を頼りに考える。
誤解していることもしばしば。90分という講義時間はあっと言う間に過ぎていく。
「継続は力なり」である。
講師の熱心な指導もあり、不思議と相手(講師)の言葉(手話)がわかるようになってきた
(忘れる言葉もこれまた多いのだが…)。
それゆえに、「自分の言葉が相手に伝わる」ということのうれしさを素朴に実感している。
裁判には必要に応じて通訳というものが存在する。
言うまでもなく、外国人に対する母国語がそれだ。
聴覚障害者に対する手話通訳も例外ではない。
私が最終的にこれを目指している訳ではないのだが、今回の講座参加は、法律事務所で
働く者として、市民の法的サービスに対する多様なニーズに応えるために、様々な垣根を
取り払いたいという思いと、自分の手話への関心が一致したものである。
必要な情報は筆談で充分伝達できる。
しかし、いつの日か私が覚えた片言の手話によって、自分の言葉が伝わる安心感を
聴覚障害者が当事務所に持ってもらえたら、というささやかな願いを抱き、
今週も教室に向かっている。