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医療保護入院中の患者が行方不明になり院外で死亡した件につき、損害賠償を求めた事例

医療保護入院中の患者が行方不明になり院外で死亡した件につき、損害賠償を求めた事例

医療過誤チームでは、定期的に判例勉強会を開催しております。
今回は、岡山地裁の令和7年2月19日判決をご紹介します。

概要

医療保護入院中に患者が無断離院して行方不明となり、その後、病院の敷地外で死亡しているのを発見されたことにつき、患者の動静を注視・把握すべき義務があったにもかかわらずこれを怠った義務違反、患者の無断離院を防止する措置を講じるべき義務があったにもかかわらずこれを怠った義務違反があったとして損害賠償を求めた事例

  • 裁判所  岡山地方裁判所
  • 原告   患者(死亡時77歳)の相続人
  • 被告   医療法人
  • 分類   精神科
  • 結果   一部認容(認容額:1982万6356円/請求額:3244万5217円)

経過

H30.7頃 患者において、記憶障害、易怒性などの認知症状が認められるようになる。

R1.7    患者、老年期認知症(前頭葉病変の強いアルツハイマー型認知症あるいは嗜銀顆粒性認知症を含むタウオパチー等の変性性認知症)と診断。

R2春頃  患者、徘徊や迷惑行為が顕著となる。

R2.5頃  患者、毎日のように徘徊し、親族がGPSを頼りに連れ戻しに行くか、警察に保護されるかを繰り返し、2日に1回は警察に保護される状態に。

R2.6.6  患者、被告病院を受診。

2:30p.m. 被告病院が精神保健福祉法33条に基づく医療保護入院が必要であると判定。

その結果患者は入院。

5:50p.m. 患者の隔離を開始。

7:10p.m. 患者の解放観察を開始。隔離処遇は継続。

R2.7.1

1:15p.m. 患者、隔離が解除され、4人部屋の病室に移動。

5:30p.m. 患者、無断離院。

5:40p.m. 近隣のグループホームからの連絡で患者を発見。患者、病院に連れ帰られる。

R2.7.11

11:15a.m.頃 患者の無断離院発覚。捜索開始。

11:30a.m.頃 患者、県道上で発見され、被告病院へ連れ帰られる。

R2.8.10

5:40p.m.頃 患者の無断離院発覚。捜索開始。

7:45p.m.頃 警察署へ捜索願い提出。

R2.8.13    患者、被告病院の敷地入り口から約300メートル離れた県道脇の畦道の下で、うつぶせの状態で倒れているところを発見される。

患者、死亡。

*直接の死因は、脱水・熱中症。死亡日はR2.8.11頃。

争点

1 被告及び被告病院職員の注意義務違反(不法行為)ないし被告の安全配慮義務違反(債務不履行)の有無

2 義務違反と患者の死亡との因果関係

3 患者及び原告の損害及び損害額

裁判所の判断

1 争点1について

(原告の主張)

被告及び被告病院職員においては、患者の諸言動より、患者が離院し、脱水・熱中症などによりその生命・身体等に危険が生じる可能性について具体的に予見できた。

被告病院の建物外に出たり、出ようとする患者の行動を把握し、対応が容易となるよう、〔ア〕当該時間帯については被告病院の建物外への出入口を限定する、〔イ〕玄関部分にセンサーマットを設置する、〔ウ〕外出申告を徹底し、交付したカードをタッチしたり差し込んだりすることによって外出が可能となる扉とするなどの離院防止措置を講ずるべきであった。

患者を無断離院させたこと、離院防止措置を講じることなく患者を無断離院されたことは、不法行為に該当するとともに、入院契約に付随する安全配慮義務に違反した債務不履行に該当する。

(裁判所の判断)

本件離院当時、被告及び被告病院職員において、患者が離院行動に出ることは容易に予見可能であったというべきである。また、患者が長時間の徘徊により脱水に陥り、熱中症に罹患するなどしてその生命・身体が害される恐れがあることも被告は十分に予見可能であったというべきである。そのため、被告及び被告病院職員は、患者の無断離院を防止し、同人の生命・身体が害されることのないよう、適切な保護を図るべき義務があったというべきである。

もっとも、被告病院職員に、さらなる人員の配置や常時の付添い等を行い、無断離院を回避すべき義務があったということはできないが、例えば、〔1〕被告病院の建物外につながる出入口(本館1階の外来玄関、A棟及びC棟の各病棟玄関)の扉が開閉すれば音が鳴り、入院患者の外出を周囲の者に知らせるチャイムやセンサーを扉に設置したり、〔2〕日中においても出入口には施錠をし、入院患者が外出を希望した際に職員が解錠し、必要に応じて職員が付き添ったり、〔3〕地方公共団体や学校でも導入が進んでいる見守りサービス(GPS機能を用いて入院患者が本件病院の敷地外に出れば職員に通知が届くサービス)を患者や家族の同意を得て利用するといった措置は用意に実現可能なものということができ、これらの措置を講じていれば、無断離院を防止できたといえるから、無断離院防止措置を講じるべき義務があったというべきである。

そして被告は、上記措置を講じなかったため、義務違反がある。

 

 

2 争点2について

(原告の主張)

患者には認知機能の低下や見当識障害などがあり、自力で帰宅したり、援助を求めることはできなかった上、歩行能力には支障はなく、歩行が短時間に限られる状態にはなかったところ、夜間でも30℃近くある酷暑の中を数時間過ごすことで脱水・熱中症等になり、死亡したのであり、被告及び被告病院職員の注意義務違反と患者の死亡との間には因果関係が認められる。

(裁判所の判断)

死因が脱水・熱中症であり、患者がそれらに罹患して生命・身体が害される事態に陥ることも十分に予見可能だったため、上記注意義務違反と患者の死亡との間に相当因果関係が認められる。

 

 

3 争点3について

(原告の主張)

合計3244万5217円

(裁判所の判断)

・慰謝料:1200万円

・死亡逸失利益:520万3406円

・葬儀関係費用:82万2950円

・弁護士費用:180万円

・合計:1982万6356円

 

この記事を書いた弁護士

医療過誤弁護士チーム

名古屋第一法律事務所で医療過誤に取り組む弁護士チームです。

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