(後遺障害逸失利益)後遺症が残って,収入が減ってしまいました。その賠償はどのようにしてもらえるのですか。
この問題も大変複雑な問題があるのですが,原則的な考え方だけを説明します。
腕が曲がらなくなった,歩行が困難になったというような後遺障害が残ると,仕事の能力が低下します。これを「労働能力喪失割合」といいます。
自賠責の後遺障害等級には1級から14級がありますが,労働能力喪失割合は,1級の場合(常時介護が必要になったなど)は100%,14級の場合(身体の局部に神経症状が残ったなど)は5%と段階的に決まっています。
そして,後遺障害によって得られなくなる収入(「後遺障害逸失利益」といいます)は次の計算式で計算します。
事故前収入×労働能力喪失割合×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
「労働能力喪失期間」は,原則として後遺障害が確定したとき(症状固定時)から67歳までですが,67歳以上の方など,高齢者の場合は個別に定められています。
また,いわゆるむち打ちのような場合,労働能力喪失期間が3年から5年に限定されることが多いです。
それから「ライプニッツ係数」ですが,将来の損害賠償額を今受け取ると,その後に利息が付くのでもらいすぎになる,という発想から,将来利息分を減額することにされています。この係数を「ライプニッツ係数」といいます。30歳の方の場合,就労可能年数は67-30=37年なのですが,ライプニッツ係数は「16.711」です。
一例として,「30歳のサラリーマンが事故前500万円の収入を得ていた。片足に著しい運動障害が残った(7級該当)。」というケースで計算してみましょう。
500万円×56%(労働能力喪失割合)×16.711(ライプニッツ係数)=4679万円
ということになります。