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不動産をめぐる問題

借地借家をめぐる問題

借地借家契約は,市民の日常生活において特に身近な契約であるといっても良いでしょう。
この借地借家契約には,借地借家法(旧借地法,旧借家法,旧建物保護法を含みます)という法律が適用されます。

一般に契約は当事者の合意によって成立し,契約内容も当事者の合意によって決まります(契約自由の原則)。
しかし,借地借家契約については,賃借人を保護する観点から,当事者間の合意の如何を問わずに適用される強行法規が多く定められています。
この強行法規に反する内容で賃借人に不利な約束は無効とされます。

賃借人に不利な約束かどうかは,具体的事情に即して判断されます。

例えば,建物を所有する目的で土地を借りたとしましょう(普通賃借権の場合)。
賃借人は賃貸借契約の期間が満了しても借地契約の更新を請求できる権利があり,土地の使用を継続することによる更新が認められています(借地借家法5条,旧借地法4条)。
では,契約書に「賃貸借契約の更新をしない」旨の特約があった場合,この特約は有効でしょうか。
この点,借地借家法9条(旧借地法11条)は,更新に関する規定を強行法規としており,更新しない旨の特約は賃借人に不利ですので無効とされます。

他方,借家について,「一定の期限を設定し,期限が到来した場合に賃貸借契約を解約する」という期限付合意解約は有効でしょうか。
例えば,賃貸人が1年後に借家を使用する事情が生じたため,当事者間で1年後に賃貸借契約を解約する旨の約束をしたような場合です。この合意解約は実質的には更新をしない約束といえます。
この点について,裁判例は,賃借人にとって不利な特約にあたるものではなく有効であるとしています。
ただし,合意解約に際し,賃借人が契約を解約する意思を真実有していると認める合理的客観的理由と合意解約を不当とする事情が認められないことが要件となっています。

また,借地借家契約においては,賃貸人の信頼関係破壊の法理が重要です。
民法541条は,債務不履行に基づく契約解除を規定しています。
借地借家契約にも特約がない限りこの規定が適用され,賃貸人は賃借人に契約の履行を催告した上で解除権を行使することになりますが,借地借家契約には信頼関係破壊の法理が働きます。
例えば,賃借人が賃料を滞納したとします。賃借人は賃貸人に対して賃料を支払う義務がありますから,この義務を怠ったということは債務不履行にあたる事実があったといえます。
そして,民法541条に従えば,賃貸人は賃料支払を催告した上で,解除権を行使することになります。
しかし,借地借家契約においては不履行事実があったからといって常に解除することはできず,その不履行が賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りない事情が存するときは,解除権の行使は信義則に反して許されません。
ただし,賃借人に契約を継続しがたい重大な背信行為があったと認められる場合は,賃貸人は賃料支払の催告すらしないで契約を解除できる(無催告の解除)と解されています。

裁判例

ここで裁判例を紹介します。

建物賃貸借契約書の中で,「1ヶ月分の賃料の延滞を理由に催告なく契約を解除できる」旨を定めた規定があった場合で,賃借人が5ヶ月分の賃料を延滞したという事例です。
裁判では「1ヶ月の賃料の支払を怠ったときは契約を解除することができる旨の特約は,催告をしなくてもあながち不合理とは認められない事情が存する場合には,催告のない解除権が許される」として,5ヶ月分の賃料延滞が「不合理とは認められない事情」と判断され,無催告の解除が認められました。

他方,建物賃貸借について,賃借人が11ヶ月分の賃料を支払わず,従来からもしばしば賃料支払を怠ったという事例では,「民法541条により賃貸借契約を解除するには,他に特段の事情が存しない限り,なお,同条所定の催告を必要とする」と判断されたものもあります。
上記事例の詳細な事実は割愛しますが,解除権制限の法理が適用されるか,解除に催告を要するかどうかは,単に延滞の期間や回数だけではなく具体的な事情に即して総合的に判断されるのです。

一口に借地借家契約とはいっても,その種類,内容もさることながら生じる紛争,解釈も多種多様です。ここでは強行法規と信頼関係破壊の法理を紹介しましたが,その他にも借地借家契約の解釈には公序良俗,権利濫用の法理の他,消費者契約法も関わります。

借地借家契約をめぐってトラブルが生じ,当事者による解決が難しい場合は,法律の専門家を介した示談の他,裁判所での調停や訴訟を利用する方法があります。
借地借家をめぐる紛争は多種多様で複雑ですので,法的な判断が必要と思われる場合は,弁護士へ相談されるとよいでしょう。

                           

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