交通事故によって相手方に損害を生じさせた場合でも、必ずその全額について賠償義務を負うとは限りません。事故の発生について相手方にも落ち度がある場合、その過失割合によって、賠償義務を負う金額も変わってきます。
この「過失割合」はどのように決まるかというと、実務では、事故の態様が詳細に類型化されており、当該事故がどの類型にあてはまるかによって過失割合もほぼ決まります。
例えば、信号のある交差点での車同士の出会い頭の衝突のケース。一方が赤信号で他方が青信号であれば、基本的な過失割合は、赤信号の車が100%、青信号の車が0%とされています。また、一方が黄信号で他方が赤信号であれば、黄信号の車が20%、赤信号の車が80%となります。
ところが、このケースで、双方とも「自分は青信号で相手が赤信号だった。」と主張したらどうでしょう。「100か0か」という争いが生じますから、決定的な証拠でも出てこない限り、交渉が成立するはずもなく、裁判は必至です。
また、ここまで極端な例ではなく事故態様についてのわずかな主張の違いであっても、過失割合が数10%も違ってくることはよくあります。
もちろん交通事故の賠償問題が長期化する原因はケースバイケースですが、過失割合についての争いが原因であるケースは多いと思います。
最近はドライブレコーダーがかなり普及してきました。価格も安くなってきて(性能にこだわらなければ)1万円を切る物もあります。
交通事故に巻き込まれ過失割合についての争いで賠償問題が長期化した場合の負担の大きさを考えると、まだドライブレコーダーをつけていない方には早めにつけることをおすすめします。
(弁護士 森田茂)