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相 続

相続人の範囲


法定相続人という言葉を聞くのですが、どういう人で、具体的に誰が法定相続人にあたるのですか。


まず、法定相続人とは、法律によって相続人と認められる者をいいます。具体的には、子、直系尊属、兄弟姉妹、配偶者がそれにあたります。ただ、直系尊属は子がいない場合に、兄弟姉妹は子と直系尊属がいない場合に相続人になるだけです。配偶者は、常に相続人になります。
ですから、妻と子が三人いる場合は、いくら父母が生きていても兄弟があっても、相続人となるのは、妻と三人の子どもだけです。


戦前のように戸主のみが相続するということはないのですか。


ありません。戦前は相続と言えば家督相続が中心で戸主のみが相続するということで、ふつうは長男が単独相続したのですが、新民法によって家督相続は廃止されました。


具体的に色々な場合についてお聞きしたいのですが、まず結婚して姓が変わった娘は相続人となるのでしょうか。


結婚しても親子関係がなくなるわけではありませんから、相続人となります。一方、嫁ぎ先の親が亡くなってもあなたの娘さんが相続人とならないことも当然ですね。


愛人との間に出来た子どもはどうですか。


父親がその子を認知すれば、父子関係が生じますから相続人となります。但し、相続分は妻との間に出来た子の半分になります。
 この点、憲法に定められた法の下の平等(14条)の見地から問題があるとも指摘されています。


自分の子どもが他の人の養子になっている場合はどうですか。


他の人の養子になっている場合でも、あなたにとって実子であることには変わりありませんから相続人となります。また一方、養子先でも法律上親子関係が生じますからそこでも相続人となります。


離婚をした先妻はどうですか。


離婚して離婚届を出してあれば、法律上(戸籍上)妻ではないのですから相続人とはなりません。


戸籍に入れていない内縁の妻はどうですか。


内縁の妻は、戸籍に記載されていない以上法律的には配偶者とは言えませんので、いくら長年一緒に暮らしていようと、子供がいようと相続人とはなりません。他に相続人が一人もいない場合は家庭裁判所に対し特別縁故者として遺産の分与を求めることも出来ますが、内縁の妻に相続させたければ、夫が内縁の妻に相続させるとの遺言書を書いておくのが一番良いでしょう。


子が二人いてその内の一人が既に死亡しており、孫しかいない場合は孫は相続できるのですか


代襲相続といって、子が先に死亡している場合その子に子ども(あなたからみれば孫)があればその子どもが相続人となります。

借金の相続

Q 
財産だけを引き継ぐということは出来ませんか。

A 
それはできません。相続というのは亡くなった人の権利義務全てを承継するのですから、財産だけ引き継ぐという都合の良いことは出来ません。

Q 
財産より借金の方が明らかに多いときも相続しなければならないのですか。

A 
いいえ、相続する必要はありません。この場合は相続をしないこと、すなわち「相続の放棄」をすればよいことになります。「相続の放棄」は相続人が自分のために相続の開始のあったことを知ったときから3ヶ月以内に、亡くなった人の住所地または相続開始地の家庭裁判所に申述することによって行います。ただし、この3ヶ月以内に放棄の手続きを取らないと法定単純承認といって相続を承認したものとみなされ借金を相続することになりますから注意して下さい。

Q 
借金もあるが財産もあり、どちらが多いかわからないときはどうしたらよいのでしょう。

A 
この場合は「限定承認」という制度を利用すればよいでしょう。「限定承認」とは、相続人が相続を承認し積極財産も消極財産(借金など)も含めて受け継ぐが、債務の支払いは相続財産の範囲内で弁済すればよいという制度です。
 限定承認をすれば、もし債務の方が相続財産よりも多い場合には相続財産の範囲で弁済すればよく、それ以上に相続人自身が責任を負う必要はありません。逆に相続財産より借金が少なければ、債務を支払った残りの相続財産を受けることが出来ます。

Q 
「限定承認」の手続きを教えて下さい。

A 
限定承認の手続きをしようとする者は、相続の放棄と同じように被相続人が死亡し自分が相続人となったことを知った日から3ヶ月以内に相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認する旨の申述をしなければなりません。この場合、相続人が数人いる場合の限定承認は相続人全員でしなければなりません。

Q 
父が銀行に1000万円の借金をしていた場合、これを4人の子が相続したとき子はそれぞれ1000万円の連帯債務を負うことになるのですか。

A 
いいえ。借金は相続されると分割債務になります。したがって、子は各自250万円ずつしか債務を負わないことになりますので安心して下さい。

遺言書の書き方


遺言書を作成する意味はどんなところにあるのですか。


1つは、相続財産についての争いを未然に防ぐことに意味があります。遺言書がないと、亡くなった人の意思がはっきりせず死亡後相続人間で争いが生ずるなど、相続人の間に禍根を残すこともあります。遺言書があれば相続財産についての争いが未然に防ぐことができ、また遺言者の希望にそって財産を引き継がせることも可能になります。


争いを防ぐという他にも意味がありますか。


あります。遺言書を書かなければ法定相続人(10月号参照)のみが相続し、その相続の割合も法律に決められた割合になってしまいます。
しかし、遺言書を書いておけば、法定相続人以外の人、例えば世話になった他人に対しても自分の財産を相続させることが出来ます。また、相続の割合も自由に決めることが出来ます。


遺言書に書けば、例えば子が3人いるのに1人に全部相続させることも出来るのですか。


出来ますが、あとで一部を取り戻される可能性があります。すなわち、子には遺留分という権利が法律上認められ、法定相続分の2分の1(この場合だと子1人の法定相続分は3分の1ですから、遺留分は相続財産の2分の1のその3分の1、つまり6分の1となります)まで後で取戻しが認められています。


遺言書を書こうと思っていますがどのように書いたらよいか書き方を教えて下さい。また、その場合おすすめのものがありますか。


遺言書は遺言者の真意を確保し遺言書の偽造や変造を防ぐため厳格な方式に従ったものでなければ法律上遺言としての効力を持たないので注意して下さい。
遺言書の方式には通常の場合は3つの方式があります。
①自筆証書遺言
「遺言書の全文、日付、氏名を自書し押印する」方式で、字句等の加除訂正もその個所に署名押印が必要となります。この遺言は最も簡単でいつでもどこでも作成でき費用もかからず遺言書の作成を秘密にできる長所がありますが、一方で遺言書が紛失したり偽造・変造・隠匿される危険もあります。
②秘密証書遺言
遺言の内容を記載した書面を作成し、それに署名押印し、その書面を封入し、書面の押印したものと同じもので封印しそれを公証人1人及び証人2人以上の面前で提出し、自分の遺言であることとその住所氏名を述べる方式です。
この遺言も遺言の内容を秘密にできますが、自筆証書遺言と同じような短所も残ります。
③公正証書遺言
遺言者本人が証人2人の立会いのもと公証人に対して遺言の内容を述べれば公証人が後の手続きを進めてくれ、最後に遺言者と証人が署名押印して完成します。
この遺言は作成に手間と費用がかかり、証人に遺言の内容を知られるという短所がありますが、遺言書が公証役場で保管されることから偽造変造されることはなく、後日の紛争防止のためにも最も確実なため、おすすめしたいものです。

相続分について


妻と子どもが2人いるときは誰がどれだけ相続するのですか。


子どもがいるときの妻(配偶者)の相続分は2分の1となります。子どもの相続分は2分の1ですから、子どもが2人いれば、相続分はそれぞれ4分の1ずつということになります。


この場合、私の両親や兄弟が生きていてもいても同じことになるのですか。


そうです。両親(直系尊属)や兄弟は、子がいないときのみ相続人となりますから、あなたの両親や兄弟が生きていても妻と子の相続分に変わりはありません。


例えば私に子がいない場合はどうなりますか。


あなたの両親が生きていれば、妻が3分の2、両親が3分の1を相続します。両親が生きていなくて兄弟がいる場合は、妻が4分の3、兄弟が4分の1となります。兄弟は親がいる場合は相続分はありません。
このように配偶者は常に相続人となるのですが、他に誰が相続人となるかによって相続分が違ってきます。


先妻の子と再婚相手の子ども(連れ子)がいる場合はどうですか。


連れ子は養子縁組していなければ法律上あなたの「子」とはなりませんから、相続権がなく先妻の子が全部相続することになります。


法律上相続分がどれだけになるかはわかったのですが、相続分を変えることは出来ないのですか。


もちろんできます。まず、あなたが遺言書を作成し、その中に誰にどれだけ相続させるかを書いておけば、法定相続分に縛られないことになります。
また、あなたが遺言書を書いていなくても、相続人全員で誰にどれだけ渡すという合意が出来れば(例えば、親の面倒を見た子どもに多く相続させるなど)相続分を自由に決めることが出来ます。
なおそのような場合は、その旨を記載した遺産分割協議書を作成し、相続人全員がそれぞれ実印を押して全員の印鑑証明書を添付しておいた方がよいでしょう。相続税の申告や移転登記の申請の場合遺産分割協議書が必要となるからです。

遺産の分割について

Q 
父が死亡したのですが、遺産分割の手続きはどのようにしたらよいのでしょうか。

A 
まず、遺言書があれば遺産の分割方法は遺言の内容に従います。遺言書がなければ、相続人全員が話し合って具体的な分割方法を決めることになります。

Q 
いつまでに協議をして決めなければならないという時期の制限はあるのですか。

A 
特に制限はありません。ただし、将来に紛争を残さないためにもなるべく早く協議して決めることをおすすめします。なお、これとは別に、相続税の申告については期限の定めがあるので注意してください。申告の期限は相続の開始を知った日(この場合だとお父さんの死亡を知った日)の翌日から10ヶ月以内です。

Q 
分割の話し合いがまとまらない場合はどうしたらよいのですか。

A 
まず、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てることになります。そして、調停でも解決できなかった場合は審判になります。

Q 
調停と審判とはどう違うのですか。

A 
調停は、非公開の場で行われ、家事調停委員(普通2名)が当事者の意見や希望などを十分に聞きながら進めていきます。その特徴は互いの譲歩を前提にして話し合いによる合意を目指すということです。このように調停においては強制力はありませんから、だれか1人でも最後まで反対すれば、調停において遺産分割の方法は決定できないことになります。
 一方、審判は、調停と同じく非公開の場でなされますが、話し合いではなく、家事審判官(裁判官)が後見的な立場からその裁量的判断により妥当な分割方法を決定する手続です。実質的には裁判の一種と言えます。

Q 
相続人間の仲が悪くて話し合いで解決できそうにない場合は、最初から審判を申し立てることはできるのですか。

A 
法律では調停前置主義が取られていますので、まず調停を行わなければなりません。実際問題としても、遺産分割は意見や要求が複雑多岐にわたることから、やはりまずは話し合いによる解決を目指すのが望ましいでしょう。

Q 
相続人の1人が行方不明の場合はどうしたらよいのでしょう。

A 
遺産分割は相続人全員で行う必要がありますから、行方がわからない相続人を除いたまま、遺産分割の方法を決定することはできません。
 この場合、行方不明となっている相続人について失踪宣告の手続をするか財産管理人の選任の申立をするなどした上で、遺産分割の手続きを進めることになります。

相続人がいないとき

Q 
私は今年亡くなった夫と50年暮らしていましたが、籍が入れてありませんでした。夫には相続人がいないのですが、私は土地建物などの夫の遺産を相続できるのでしょうか。

A 
いくら長い間夫と暮らしていても、内縁関係では法律上の夫婦とは言えません。内縁の妻には相続権はありませんので、相続はできないことになります。相続人がいない場合の遺産は、最終的には国庫に帰属することになります。

Q 
では、私のような内縁の妻が夫の残した財産を取得する方法は全くないのですか。

A 
あります。相続人の不存在が確定し、あなたが家庭裁判所で「特別縁故者」と認められれば、最終的には裁判所の決定により遺産である土地建物を取得できる可能性があります。「特別縁故者」とは亡くなった人と生計を一緒にしていた人や看病に努めた人などのことです。具体的には家庭裁判所が色々な事情を考慮し個別的に判断して決めます。

Q 
具体的にはどんな人が「特別縁故者」と認められるのでしょうか。私はそれにあたりますか。

A 
これまでの裁判例として認められた人は、内縁の妻や事実上の養子(戸籍上は養子縁組していないが実態としては養子として暮らしてきた人)、亡くなるまで世話をした人などが多く認められています。あなたの場合は、50年間も内縁の妻として生活してきたのですから特別縁故者にあたる可能性が高いと考えられます。

Q 
特別縁故者にあたるとして、私が土地建物を取得しようとすると、具体的にはどのような手続をしなければならないのでしょうか。

A 
まず、家庭裁判所に対し相続財産管理人の選任を申し立てることが必要です。そうすると、裁判所から選任された財産管理人があなたの夫について相続人の調査や財産の清算などを行います。あなたは、その財産清算の手続の中で、財産管理人に対して「相続財産分与」の申立をすることになります。申立人があなた一人の場合は土地建物もあなたの名義になる可能性が高いでしょう。

遺言書を発見した場合


私の父が先月亡くなったのですが、その後、父の机の引き出しから父が自分で作った遺言書が見つかりました。どうしたらよいのでしょうか。


自筆証書遺言を保管していた人や発見した相続人は、遅滞なく家庭裁判所に提出して、その遺言書が法律で定められている方式を守っているかどうかの調査をしてもらわなければなりません。この手続きを「検認」といいます。


遺言書は封筒に入っているので中身が気になるのですが、勝手に開けてはいけませんか。


封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人等の立会いのもとで開封する必要がありますので、勝手に開けてはいけません。勝手に開けると過料の制裁を科されることがあります。


もし、そのようなことを知らずに勝手に開けてしまった場合、遺言書は無効となるのですか。


「検認」は、その遺言の有効・無効を決定する手続きではありませんから、開けてしまった場合でもそれだけで無効となるわけではありません。


父の遺言書が他にも押し入れなどから出てきて合計三通もあったのですが、どの遺言書が有効となるのでしょうか。


数通の遺言書があった場合、一番最後に作成されたものが有効となります。遺言は本人の最後の意思を尊重するものだからです。


古い遺言書が公正証書で作られていて新しい遺言書が自筆証書で作成されている場合でも新しい遺言書が有効になるのですか。


そうです。これも最後の意思を尊重しようという趣旨からです。

農地の相続について


私の父が亡くなったのですが,遺産として少しばかりの農地があります。相続人は私と兄だけですが、兄は都会でサラリーマンをしているので、田舎にいる私が跡を継ぐことになると思います。農地を相続するためには,どんな手続きが必要なんでしょうか。


一般的には、農地の権利を移転する場合は農地法により都道府県知事または農業委員会の許可が必要となります。しかし、農地を相続する場合には農地法上の許可は不要です。


私と兄でどちらが継ぐか決まらない場合はどうしたらよいのですか。


相続人間で協議が整わないときは家庭裁判所に調停を申し立てることになります。そして,調停でも合意が成立しない場合は家庭裁判所の審判で決められることになります。


もし、農業を継ぐ者がいない場合はどうしたらよいのでしょうか。できれば,農地を売却し,それで得た代金を分割をしたいと思っているのですが。


相続人全員の合意があれば第三者に任意に売却することができます。ただし,やはり農地である以上、農地法上の許可が必要となります。

連帯債務・保証債務の相続


商売をやっていた私の父が、知人と連帯して銀行から営業資金2000万円を借りたまま亡くなりました。母と兄と私が相続したのですが、どれだけの割合で借金を負うのでしょうか。


連帯債務というのは債務者が各自で全額の支払義務を負うものですから、あなたのお父さんも一人で2000万円の債務を負っていることになります。ですから、相続分に応じてあなたとお兄さんは500万円、お母さんは1000万円の債務を知人と連帯して負うことになります。


父の知人が全額を支払った場合はどうなるのですか。


銀行に対するあなたたちの債務はなくなります。ただし、お父さんの負担部分に相当する金額について、その知人はあなた達に対して請求をすることができます。この権利を求償権といいます。例えば、お父さんと知人が2人の間では借入金を半分ずつ負担すると約束していた場合、あなた達は上記の金額の半分の請求を受けることになります。


父が、連帯債務ではなく、知人の借金の連帯保証人になっていた場合はどうですか。


連帯保証人の場合も同様にあなた達家族がお父さんの債務を相続分の割合に従って相続します。知人が全額を支払えば銀行に対するあなた達の債務がなくなるという点も同じです。ただし、連帯保証人の場合は負担部分というものがありませんから、その知人からあなた達に対しての求償権は発生しません。


父の保証が自分の会社の営業資金の個人保証だった場合、父の商売を続ける兄だけが保証人になって私や母は外れるということは出来ませんか。

A 
その場合、お金を貸している銀行の承諾が必要になります。お兄さんが全財産を取得し商売も続けられること、借金が商売の営業資金であること、店が銀行の抵当に入っていること等の事情がある場合、十分な説明をすれば銀行の承諾を得られることも十分考えられます。


父の保証が、「会社に迷惑を掛けない」という甥の身元保証であった場合も私たちが相続により保証人となってしまうのでしょうか。


身元保証はその人限りの一身専属的なものと解されますので、相続されません。ご安心ください。ただし、例えば甥が勤務先である会社の金を使い込んでいてお父さんの死亡時にすでに損害が発生しているような場合、その賠償義務は相続されますのでお気をつけください

遺言の効力


ちょっと困ったことが起きたのですが。


何でしょう。


実は私の父が遺言を書いたと聞いたのです。ところが、その内容は、遺産の大部分を母や兄に相続させ私の相続分は殆ど無いというものらしいのです。何とか、それなりの相続分の遺産をいただくことは出来ないんでしょうか。


それは困りましたね。ただ、仮にあなたの相続分が無いという内容の遺言であっても、お父さんの死亡後、あなたには、本来の法定相続分の2分の1に相当する財産を請求できる遺留分という権利がまだあります。あなたの場合、本来の法定相続分は4分の1ですから、相続財産の全体の8分の1を遺留分として取り返すことが出来ますよ。


一旦書いた遺言はずっと有効なのですか。父に遺言を新しく書いてもらうことは出来るのでしょうか。


それは遺言者の意思によることになりますから、お父さんがその気になりさえすれば、当然できますよ。そして、新しい遺言書を作った場合、前の遺言の内容のうち新しい遺言と抵触する(内容の異なる)部分は無効となり、新しい遺言のみが有効となります。


とすると、私の場合は、父にお願いして、例えば私に遺産の3分の1を相続させるという内容の遺言を新しく作ってもらえばよいですね。


そういうことになります。


もし、父が私に株券を相続させると遺言に書いていたのに、生前に全部売却して使ってしまったというときはどうなるのですか。私は、かわりに他の財産が貰えるのでしょうか。


残念ながらもらえません。というのも、生前に自分の財産をどう処分するのかは本人の自由ですので、遺言に拘束されることはないのです。お父さんが散財しないようにしっかり目を光らせておくしかありません。

相続放棄と生命保険

Q.
夫が、先月、病で急死しました。今月に入り、夫には3000万円ほどの借金があることが判りました。一方、夫は子のいない私を受取人とする2000万円ほどの生命保険に入っていたことが判りました。何の資産もないので相続放棄したいと考えていますが、何か問題が起きないか心配です。まず、相続放棄はいつまでにしなければならないのでしょうか。

A.
相続放棄をする場合には、相続開始を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述という手続きをしなければなりません。

Q.
手続はめんどうですか。

A.
戸籍謄本や住民票、印鑑を持って家庭裁判所に出かけ、裁判所にある相続放棄の用紙に必要事項を書いて提出するだけです。書類を提出すれば、特段のことがない限り2週間くらいで申述の受理をして貰えます。

Q.
生命保険を貰うと相続財産を処分したということで、放棄できなくなると言う人がいますが。

A.
受取人のあなたは保険金を受け取ってもかまいません。この生命保険金は相続財産ではなく、あなたの固有財産だからです。ですから保険金を貰っても相続放棄はできます。

Q.
受取人は「私の名前」になっていますが、もし「相続人」となっていたら違いますか。

A.
いえ、同じ扱いでかまいません。受取人が「相続人」となっていても「妻」となっていても、それはこの受取人の指定については、被保険者(この件では夫のこと)死亡のとき、すなわち保険金請求権が生ずるときの「相続人」又は「妻」を特に受取人として指定したもので、保険金請求権の効力発生と同時にこの「相続人」か「妻」の固有財産になります。ですから具体的に氏名が書いてなくとも同じ扱いです。

Q.
夫は公務員でしたから共済関係の保険金なども出ますが、心配ありませんか。

A.
共済組合の保険でも受取人の順位が決められているはずです。生計を一にした配偶者であるあなたが第1順位の受取人のはずです。この保険金も又相続財産ではありませんからこれまでの説明と同じ扱いで結構です

痴呆老人が遺言を作りたいとき

Q 
78歳になる父が、突然遺言を書きたいと言い出しました。でも、最近の父は痴呆状態にあるとしか思えないので、どうしたらいいものか困っています。

A 
民法では、満15歳以上で、物事に対する一応の判断力(意思能力)のある人なら、遺言能力が認められます。痴呆といっても、その症状は様々ですよね。高度の痴呆で意思能力が全くない人でも、その後回復した時や、一時的に能力を取り戻した時には遺言できますし、逆に、いわゆるまだら呆けで一見して痴呆とは見えない人でも、全く意思能力を欠いた時に遺言したのであれば無効です。要は、遺言時に意思能力があるかどうかが問題なのです。また、難しい内容の遺言は能力的にできなくても、全財産を誰それに相続させるといった簡単な内容の遺言であれば可能であるというように、遺言の内容によっては遺言能力の有無の判断も違ってくると考えられます。
 したがって、まずは、お父さんの症状について、お医者さんと良く相談することが必要です。
 お医者さんのアドバイスを聞いて、有効な遺言が作成できるということなら、法律に定められた方式で作成する必要があります。自筆証書遺言といって、全文・日付・氏名を自書し、印を押すという形式による方法もありますが、これですと、後で遺言書を作った当時の意思能力が争われた場合に、立証が難しくなる可能性があります。せっかく作るのでしたら、後日の紛争を避けるために、公正証書遺言の方式によることを是非お勧めします。通常は公証人役場に出向いて作成してもらうのですが、病院や自宅に出張してもらうことも可能です。必要書類については公証人役場に問い合わせれば教えてもらえます。
 公正証書遺言を作るには、利害関係のない成人2人に証人として立ち会ってもらう必要があります。証人には何の資格も必要ないのですが,お父さんの場合は、遺言能力を証明する意味でも、できればお医者さんに証人をお願いするのがよいと思います。なお、お父さんについて既に成年後見が開始されている場合は、医師2人以上の立ち会いによる証明が必要となります。

中小企業法務