Q
私の友人が自分のマンション内で、ある奥さんと不倫をしているというビラが撒かれました。友人は怒って断固たたかうと言っているのですが、何か犯罪が成立するのですか。
A
名誉毀損罪(刑法230条1項)が成立する可能性が高いと思われます。名誉毀損罪は、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」場合に成立します。公然とは「不特定または多数の者」に対してなすことを意味し、「事実を摘示」とは人の社会的評価を害するに足りる事実を具体的に指摘することを言います。
Q
もし、ビラの内容が抽象的であったり、「不倫関係にある」という言葉がない場合はどうですか。
A
具体性を欠くことになり名誉毀損罪は成立しないでしょう。但し、名誉毀損罪より刑の軽い「侮辱罪」(刑法232条1項)が成立する場合があります。
Q
でももし、友人の不倫関係が事実であった場合は名誉毀損罪は成立しないのでしょう。
A
いいえ。実際に不倫関係が事実であっても名誉毀損罪は成立するのですよ。不特定多数の人に公言されると、社会的評価が落ちることは確かじゃないですか。例えば、一度刑務所に行ったことがあるが、心を入替え今は真面目に働いている人が、公衆の面前で「あいつは前科者だ」と言われたら、前科者であることは事実ですが、その人の社会的評価を落すことになることはおわかりでしょう。
Q
でも、何かしっくりこないのですが。例えば、人の模範となるべき政治家が実際に不倫をしたり、反社会的な行動をしている場合に、それが本当だったとしても名誉毀損になるなんて納得出来ないのですが。
A
そのとおりですね。法律はそこのところはうまくなっていて、「公共の利害に関する」ことで、「専ら公益を図る目的」でなされたときは、真実であれば名誉毀損として罰しないとしているのです(刑法230条の2第1項)。
Q
名誉毀損罪は親告罪と聞きましたが、どういうことですか。
A
被害者自身が告訴しないと犯罪とならないものを親告罪と言います。
ですから、友人本人がする気がなければあなたが代わりに告訴は出来ないのです。これは、被害者の気持ちを大切にしようとの考えられたからです。
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