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多重債務

債務整理(自己破産)について(1)


最近テレビや新聞で自己破産というのが増えていると言われて
いますが、どんな制度なのですか。


自己破産とは、裁判所に支払い不能の状態であることを認めてもらう(破産宣告)と共に最終的に支払いの責任を免れさせる(免責)制度で、任意整理と異なり、返済不能な場合に取る手続で裁判所に対して申し立てるという方法を取ります。


自己破産すると本当に借金がチャラになって一銭も払わなくてよくなるのですか。何かおかしな気がするのですが。


免責が許可されれば借金はチャラになります。非常に都合のよい制度のようにも思われますが、これは法律が債務者が借金地獄から救い生活をやりなおすチャンスを与えようとする制度ですので、申し立てるのに遠慮する必要はありません。特に最近の多重債務者の大量増加は、高利をとるサラ金の融資の濫用が大きな原因であり(実際にサラ金大手各社は超大企業以上の利益をあげています)、社会的問題にもなっています。ただ、どんな人でも免責が許可されるわけではなく、例えば浪費の程度がひどい人、ギャンブルで借金を作った人、詐欺的な借り方をした人、財産を隠している人などは免責が許可されない場合があります。


一旦破産者となると、選挙権がなくなったりするなど権利が制限されたり、戸籍に載るとかの不利益が課されたりすると聞きますが本当ですか。


そんなことはありません。まず、誤解が多いのは、破産者というのは裁判所で破産手続中である場合に限りの言葉で、破産手続が終われば破産者でもなんでもなくなるのです。ですから一度破産すれば一生破産者となるというものではありません。また、破産手続中は破産者ですが、選挙権などの権利の制限はありませんし、戸籍に載るということもありません。


そうすると、考えられる不利益はどんなことがありますか。


まず、破産の決定があれば官報に載ります。いわゆるブラックリストにも載りますので、一定期間借り入れをすることができなくなります。
 また、破産手続中は会社の取締役など一定の役職や職業に就くことが出来なかったり、管財人がつけられる破産の場合、郵便物がいったん管財人のもとに届けられたり、住所変更、海外旅行には裁判所の許可がいるようになります。

債務整理(自己破産)について(2)


自己破産をする場合、全ての財産が取られてしまうのでしょうか。


自己破産とは、自分の財産を全て集めても到底返済出来ないので免責させて下さいということですから、原則として財産は全て差し出すことになります。不動産や価値のある車などを所有している人は出さねばなりません。
しかし、皆さんが日常的に使われている家具や電気製品等は差し出す必要はありませんし、一定額までの現金や預金、生命保険は所有することが認められています。


そうなんですか。身包みはがされるというイメージがあったのですが、家財道具などはそのままつかって生活が出来るということなんですね。
 破産者の毎月の給料やボーナスなどの収入はどうなるのですか。全額自分のものになるのですか。給料の差押えということを聞くのですが。


破産宣告後取得した財産は新得財産といって全部自分のものとなります。ですから、給料は全額自分のものになりますし、仮に後に車を買っても家を買っても自由ですし、後から取られることもありません。


破産宣告前の財産は、幾らくらい差し押さえられることがあるのですか。


判決が言い渡されたり、あらかじめ公正証書を作成していたりして、差押えを受けた場合には、原則として税引後(手取り)の4分の1が差し押さえられると思って下さい。


最後に破産の費用はどれくらいかかるのですか。


破産の費用には、裁判所の手続きに要する費用と、弁護士に依頼する費用とがかかります。裁判所の手続きに要する費用ですが、破産しようとする人が不動産などの財産を持っている場合は破産管財人を選任する費用がかかりますのでその場合は原則として50万円ほどかかります。また、弁護士費用ですが、自営業者の人は50万円から、そうでない人は30万円くらいかかると思ってよいでしょう。

債務整理(任意整理)について(1)


私の弟がサラ金などの借金が増えてどうしようもなくなったと泣きついて来たのですが、ちょっと相談にのってやってくれませんか。


いいですよ。お困りな様子ですが、弟さんはどのくらいの借金があるのですか。


銀行やサラ金、クレジット会社にもあるようで、合わせて約300万円くらいあるようです。月々の返済も15万円はあるようで、手取り28万円の給料の半分以上を持っていかれ、分譲マンションのローンも毎月5万円支払いがあり、とても支払っていける状態ではありません。


それは大変ですね。そうすると、現在は返すために借りるという自転車操業のようになっているわけですね。


そうなんです。もうどこも貸してくれるところはないし、自宅や会社にも催促の電話や手紙は来るし、裁判して強制執行すると言われ、弟家族4人はどうしようもない状態なんです。もう夜逃げでもするしか手はないのでしょうか。


待ってください。借金を整理する方法がありますから一緒に考えましょう。まず、現在の弟さんの家の生活費ですが、切り詰めたらいくらくらいで出来ますか。つまり、毎月借金にいくら返せるかをなんですけどね。


毎月返せるのは8万から9万円が精一杯ですね。これくらいなら何とかやっていけます。


それなら任意整理か個人再生という方法が可能でしょうね。


任意整理ってなんですか。


借金の整理の仕方には大きく3通りあって、一つが自己破産の申立、 一つが個人再生手続き、もう一つが任意整理といって自分の意思で返済計画を立て直し返済していくという方法があるのですよ。どちらも弁護士が入ってやれば、サラ金等の債権者は債務者に請求してはいけなくなるので、自宅や会社に電話されたり訪問されたりすることは一切なくなりますから生活は落ち着きますよ。


じゃすぐに先生入ってやってくれませんか。


そうあせらないでください。任意整理というのは時間がかかるし本当にその人が生活を切り詰めて返していくという強い意志と、弁護士との信頼関係が重要になってきます。ですから、まずは弟さん本人に私の事務所まで来て戴きじっくり相談した上で、弟さんだけでなく私自身もこれならやれると確信する必要があるので、早急に弟さんを連れて来てください。

債務整理(任意整理)について(2)


今日は兄に言われて事務所に伺ったのですが、任意整理という方法をもう少し詳しく教えてほしいのですが。


いいですよ。先回お話したように任意整理というのは自己破産と違って借金を返すことが前提となります。ですから、ある程度毎月返済資金を用意出来る人でないとこの方法は取れないんですよ。


分割で、出来るだけ毎月の支払を少なくするというわけにはいきませんか。


出来るだけ少なくしたいといっても限界があります。一般に返済期間は3年間が目安とされています。ですから、私たちは返済に3年を超える場合は自己破産か個人再生手続きの方法をお勧めすることにしています。


私も何とか3年で返そうと思うのですが、弁護士さんにお願いすると少しは返す額が少なくなるのでしょうか。また、3年間の間、年3割ほどの遅延利息が付いてしまうのでしょうか。


おっしゃるとおり、サラ金等は出資法にさだめられた年29.2%近くの高利を取っています。
しかし、このような高い利息は利息制限法に違反していますので、弁護士は、利息制限法に引き直して計算し直します。(例えば1社で50万円借りた場合利息は年1割8分)残額も少なくなり、長期に渡って返済していた場合などは残債務が0となったり、過払いとして支払いすぎたぶんを返してもらえる場合もあるんですよ。
また、弁護士が入るときは将来利息はカットさせるのが普通です。ですから、利息制限法に引き直して計算した残額のみを3年間の分割で払えばよいことになります。


そうすると、一人で悩んで返済していくよりかなり楽になりますね。


いま返済しているうちのかなりの部分が利息に充てられているでしょう?それを考えただけでも、楽になると思います。ただ、毎月確実に返済資金を用意してくださいね。

会社が倒産した場合


今の不景気で私の弟の会社が倒産してしまいまして、これまでの働いていた給料もまだもらっていないものがたくさんあるのですが、これも諦めなければならないのでしょうか。


それは困りましたね。でも、諦める必要はありませんよ。
まず、未払い給料は法律的に会社の残財産から優先的に支払われるべきことになっています。破産手続き開始前3ヶ月間の給料や破産開始決定後の給料は特に、財団債権という形でさらに優先されますから、会社が自己破産の手続をとれば裁判所から破産管財人が選ばれ破産管財人から支払われることになります。


その場合、どんな手続をしたらよいのですか。


弟さんに未払い給料があることは会社もわかっているはずですから、裁判所の方から弟さんの方に債権届という書類が来ますので、それに必要事項を記入して提出すればよいことになります。


会社が倒産したが自己破産手続をしていない場合(事実上の倒産)はどうしたらよいでしょうか。


裁判所自己破産手続をとっていない場合や自己破産手続をとったが残余財産がない場合には、労働福祉事業団から一定期間の未払い給与の八割(全額ではありません)を立替えてくれる制度がありますので、これを利用されるとよいでしょう。


この場合はどこに行ったらよいのですか。


最寄りの労働基準監督署に行けば手続の方法、必要書類などを教えてくれます。このような制度があることを知らない方が多く、倒産して何にも会社に財産がなければ終わりだと思っていらっしゃいますが、そうではありませんので是非知らない方に教えてあげてください。


良いことを聞きました。それなら先生、会社が倒産してないが苦しいから払えないと言ってきたらどうでしょう。


リストラでやめさせられたが未払い分があるという例もあるようですが、この場合も労働基準監督署に行って相談してください。労働基準監督署が会社に対して払うよう働きかけてくれますよ。

個人再生手続について

Q 
個人再生手続とはどんな手続きですか?

A 
債務整理の方法はいくつかありますが、その中にいわゆる「個人再生手続」というものがあります。個人再生手続は、「民事再生法」という法律の中に定められている制度で、厳密には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2つがあります。個人再生手続の内容を簡単に言えば、「債務(借金とほぼ同じ意味)の総額のうち裁判所の手続を通じて決められた一定の金額を分割で支払えば残りの金額の支払を免除してもらえる制度」と表現できるでしょう。この手続には、他の債務整理の方法と比べると、以下のような特色があります。 
(特色1)自宅を守ることができる
 債務整理が必要な人の中には、自宅として土地建物あるいはマンションを所有しているが住宅ローンが残っており自宅に抵当権が設定されているという人もいます。このような場合、個人再生手続では「住宅資金貸付債権に関する特則」という制度を使って、住宅ローンをこれまでと同様の条件で返済していくことができます(一定の条件を満たせば弁済期間の延長などが認められる場合もあります)。このように、「自宅を守ることができる」というのが個人再生手続の大きな特色の一つです。ただし、自宅が住宅ローン以外の債務の担保にもなっている場合には、この特則は利用できませんので、ご注意ください。
(特色2)浪費があっても利用できる
 借りたお金をギャンブルなどで浪費してしまったという人もいます。破産手続では浪費があると免責が不許可になる可能性がありますが、個人再生手続の場合、浪費があっても手続利用の支障にはなりません。ただし、分割とは言え債務を返済していかなくてはならないので、浪費をやめてしっかりとした生活設計をしないと、結局、返済ができなくなってしまいます。この点は注意が必要です。

Q 
どんな場合に手続を行えますか

A 
個人再生手続を利用できるのは、以下のような要件を満たす場合です(ただし、他にも細かい要件が若干ありますので、あらかじめご了解ください)。

(1)個人であること
名前からも明らかなように個人再生は個人のための手続です。会社などの法人は個人再生手続を利用できません。

(2)支払不能のおそれがあること
借金等の支払に困っている人のための制度ですから、「支払不能のおそれ」があることが必要です。

(3)収入
個人再生手続は一定の返済をしていく手続ですので、返済の見通しが立たなくてはいけません。そのため、継続して安定した収入の見込みがあることが必要です。

(4)再生債権の制限
再生債権の総額とは、やや乱暴な言い方をすれば借金の総額とほぼ同じ意味です。ただし、上記の住宅資金貸付債権や物的担保等により回収が見込まれる債権はこの金額には含まれません。そして、この再生債権の総額が5000万円以下でなければ個人再生手続は利用できません。

Q 
返済する金額はどのくらいですか。

A 
返済をする総額は「最低弁済基準額」を上回る金額でなければなりません。この「最低弁済基準額」は再生債権の総額などから算出されます。ただし、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」では計算の方法が異なりますし、それ以外の条件によっても金額が異なることがあります。詳しいことについては、弁護士会のサラ金クレジット法律相談などでご相談ください。

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